出発の前日、財布に入れるぶんの現金をいくら両替するか決められない——韓国遠征の準備で、最後まで残るのがこれです。クレジットカードもWOWPASSも用意した。それでも「現金ゼロで平気」と書いている記事と「現金は持っていくべき」と書いている記事が、どちらも出てきます。
失敗が両側にあるのが、この問題のややこしいところです。足りなければ改札の前で止まり、露店で買えません。多過ぎれば使い切れず、帰国後に円へ戻すときの手数料で目減りします。それなのに検索して出てくるのは「だいたい◯万円」という平均値だけで、その額が自分にも当てはまるのかは分かりません。
結論を先に置きます。総額から決めるのをやめてください。韓国で現金でしか埋まらない場面は3つしかありません。その3つを埋めるぶんだけを現金で持ち、残りはWOWPASSの残高に載せる——これだけで、足りない側と余る側の両方が同時に閉じます。なお本記事の数値は、韓国の公式サイト・韓国の報道・GuideBridgeの既存記事で2026年8月時点に確認したものです。
- 現金でしか埋まらない3つの穴が、それぞれどこか
- 交通の入口で現金を使わずに済ませる3つの道と、そのうち1つがソウル市内でしか効かない理由
- 露店でカードを断られたとき、日本から来た人にだけ逃げ道がない理由
- 物販列のために現金を多く持つ必要が薄いこと
- 余らせないための上限の決め方(多く持つべきなのは現金ではありません)
【結論】現金は総額で決めない|現金でしか埋まらない穴は3つだけ
平均額が役に立たないのは、同じ4日間の遠征でも、条件しだいで必要な現金がまるごと変わるからです。WOWPASSを空港の受取カウンターで受け取るのか、市内の機械で自分で作るのか。それだけで、出発前に用意すべき現金は「ゼロ」にも「日本円の紙幣が必要」にも振れます。平均値はこの差を平らにならしてしまいます。
そこで、金額ではなく場面から数えます。韓国はカード社会で、コンビニもカフェも飲食店もカードで完結します。それでも現金でなければ埋まらない穴が、次の3つだけ残ります。

穴① 交通の入口。地下鉄とバスの改札は、韓国独自のT-money規格でしか通れません。実物のT-moneyカードを買ってチャージする場合、そのチャージが現金です。
穴② 露店と伝統市場。カード端末があっても使わせてもらえない場面があり、しかもその場での逃げ道が、日本から来た人にだけありません。理由は後述します。
穴③ カードが使えなかったときの復旧。端末が落ちている、カードが弾かれる。そのとき列は止まっていて、原因を調べている時間はありません。
3つのうち穴①だけは、出発前の準備で消せます。穴②と穴③は消せません。つまりあなたが埋める穴は、出発前に何を押さえたかで2つにも3つにもなる——これが、平均額では決まらない理由です。
現金は①交通の入口 ②露店 ③復旧の3つを埋めるぶんだけ持つ。それ以外はWOWPASSの残高に載せる。
理由はシンプルで、次の渡韓の予定がある人なら、残高は使い残しても損になりませんが、現金は損をするからです。WOWPASSの残高は最終チャージ日から6年間カード内に保存され、次の遠征でそのまま使えます。円に戻す必要がないので、再両替の手数料も発生しません。逆に、当分そのつもりがない人は、残高に寄せる意味がありません——その場合は現金を3つの穴のぶんだけ持ち、あとはカード払いで通すのが素直です。
穴① 交通の入口|準備していなければ現金が要る(消すための3つの道)
買い物と交通は、韓国では別の仕組みで動いています。店の支払いはクレジットカードでもWOWPASSでも通りますが、地下鉄とバスの改札はT-money規格でしか反応しません。日本で発行したカードのタッチ決済では、2026年7月時点でソウルの地下鉄・バスの改札を通れません。日本の交通系ICカードも使えません。
そのため、実物のT-moneyカードを買って使う場合は、カードを買うお金とチャージするお金の両方が現金になります。カード代は2,500〜5,000ウォン程度で、これは返金されません。地下鉄の初乗りは1,400ウォン程度です。
ただし、この穴には現金を使わずに越える道が3つあります。効かない場面まで含めて並べます。

| 回避する道 | 現金は要るか | 効かない場面 |
|---|---|---|
| (1) WOWPASS公式の空港セットを事前予約する 決済を先に済ませ、空港の受取カウンターで受け取る。T-moneyに1万ウォンがチャージ済み | 要らない | 受取カウンターのある空港に着くことが前提 |
| (2) WOWPASSアプリでT-moneyへ振り替える 買い物用の残高から交通用へ移す | 要らない | iPhoneなどNFC対応端末が必要(Androidは一部非対応) |
| (3) 気候同行カードの短期券を新型券売機で買う 2026年3月17日から、ソウル地下鉄1〜8号線の273駅・440台の新型券売機で海外発行カードが使える(サービス利用料は平均3.7%) | 要らない | ソウル市内の交通に閉じている。広域バス・新盆唐線・GTX・他市道免許のバスは対象外 |
(3)を「海外カードでT-moneyがチャージできる」と読み替えない
ここが本記事でいちばん誤読が起きやすい箇所です。新型券売機で海外発行カードが使えるようになった対象として案内されているのは、気候同行カードの購入・短期券のチャージ・1回用乗車券です。一般のT-moneyチャージが対象だとは公表されていません。「海外カードで券売機が使える=T-moneyも海外カードでチャージできる」と広げて読むと、現地の券売機の前で計画が崩れます。
もうひとつ、(3)には行き先の制約があります。気候同行カードはソウル市内の交通に閉じているため、KINTEXやINSPIREアリーナのようにソウル市外へ向かう遠征では、これだけでは移動が完結しません。会場がどこかを先に確認してから選んでください。
現地の機械でWOWPASSを作るなら、要るのは「日本円の紙幣」
見落とされやすいのがここです。空港セット以外の機械でWOWPASSを新規発行するときは、日本円の現金紙幣を機械に入れます。「現金はいくら要るか」と考えているとウォンのことばかり気になりますが、この場合の答えはウォンではなく日本円です。ウォンだけ用意して日本円の紙幣を持っていないと、発行の段階で止まります。
この章の結論:(1)か(2)を出発前に押さえておけば、交通の入口は現金ゼロで越えられます。押さえていないなら、この穴を埋めるぶんの現金だけは持ってください。
受け取り方やチャージの具体的な手順、WOWPASSの中で残高が2つに分かれている仕組みは、下の記事にまとめてあります。この記事は「いくら・どの手段か」を決めるところまでを担当します。

乗り方や終電の逆算そのものは韓国の地下鉄・終電の逆算ガイドで扱っています。
穴② 露店と伝統市場|日本から来た人にだけ、逃げ道がない
「屋台は現金のみ」とよく言われますが、正確ではありません。報道されているのは「カード端末はあるのに使わせてもらえない」という運用のほうです。広蔵(クァンジャン)市場では、端末があるのに操作が難しいとしてカード決済を断り、口座振込を求める事例が2024年に報じられ、2025年・2026年にも同種の記事が出ています。露店の多くが事業者登録をしておらず、現金の領収書を出す義務がないことが背景として挙げられています。
[二次情報・韓国紙の現地取材が複数年で交差]
「カードは無理、口座振込で」と言われたとき、韓国にお住まいの方はその場で振り込めます。不便ではあっても、買えないわけではありません。
けれど韓国の銀行口座を持たない旅行者には、その方法が使えません。現地の人にとっては不便で済むことが、旅行者にとっては「買えない」になる——これが、露店で現金を持っておく理由です。
改善は進んでいます。ソウル市と鍾路区は2026年6月1日から広蔵市場に露店の実名制を導入し、違反が積み重なった露店は退出の対象になりました。ただしこの施策には決済手段についての記述がありませんので、「実名制が入ったからカードが通るようになった」とは読めません。
この章の結論:露店で要るのはその日に食べるぶんだけです。宿代も会場までの移動もここには乗りません。「1日の買い食いの額 × 露店に行く日数」が、この穴の大きさになります。市場や屋台に立ち寄る予定がない遠征なら、この穴はほぼゼロです。
なお、実際にいくら使うのかは体験の数字であり、本記事はまだその実測を持っていません。推測で金額を置くことはしません。現地で確認した実額は、確認後にこの記事へ追記します。
金額を先に出せない代わりに、金額を知らないまま出発しても回せる持ち方を置きます。出発前に日数ぶんを見積もろうとしないでください。初日は穴③のぶん(市内に着くまでの現金)だけを持って市場へ行き、そこで実際に払った額を「自分の1日ぶん」として、2日目以降はその額だけを行く日の朝に足す。この順番なら、平均額を調べなくても2日目からは自分が見た数字で決められますし、初日に持ち過ぎることもありません。足すぶんはWOWPASSの機械から引き出せるので、両替所へ戻る必要もありません。ひとつだけ守ってほしいのは、初日に使ったら、その日のうちに同じだけ引き出して戻しておくことです。穴③は復旧のための手持ちなので、市場で使い切ったまま夜を迎えると、カードが弾かれたときの立て直しが効かなくなります。引き出しには1回につき1,000ウォンの手数料がかかるため、こまめに出すより1回でまとめて出すほうが安く済みます。
穴③ 復旧|カードが使えなかったとき、現金以外で立て直せるか
3つ目は、金額としては小さいのに、外すと影響が大きい穴です。カードが弾かれる、端末が落ちている、残高が足りない。いずれも起きるときは列が動いている最中で、原因を調べる余裕はありません。
WOWPASSを持っていれば、機械からウォンの現金を引き出せます。公式の案内では1回あたり10万ウォンまで、複数回の引き出しが可能で、1回につき1,000ウォンの手数料がかかります(2026年8月時点)。ここが実質的な「現金の予備タンク」になります。
仁川空港のWOWPASS機械では、現金の引き出し機能が使えません。「空港に着いたらWOWPASSから現金を出しておこう」という計画は、そこで止まります。引き出しはソウル市内の機械で行うことになるので、市内に着くまでのぶんの現金は先に持っておくという設計になります。
クレジットカードのキャッシングという手段もあります。ただし利用条件や手数料の考え方は、カードそのものの話になります。韓国でカードが通らないときに何が起きているのかは、韓国でクレジットカードが使えない原因と対策にまとめてありますので、詳しくはそちらを見てください。
この章の結論:復旧ぶんの現金は「市内に着くまで」を基準に見積もります。目安をひとつ置くなら、WOWPASSとT-moneyの使い分けで示している運用ライン(交通用の残高は1万ウォンを下回ったらチャージする)と同じ桁が、そのまま持ち歩く現金の目安になります。市内へ着いてしまえば、WOWPASSの機械が予備タンクとして働きます。
逆に、現金が要らない場面|物販列で両替し過ぎるのが本当の損
ここからは多過ぎる側を閉じます。両替し過ぎの原因でいちばん多いのが、「物販で現金が要ると思い込む」ことです。
会場のグッズ販売ブースについては、決済端末の導入事例として、2024年3月にオリンピック公園のKSPOドームで行われたK-POP公演のブースが紹介されています。そこでは海外発行のカード・QR決済・Apple Pay・NaverPay・KakaoPayが通り、支払いが速くなったことで購入待ちの列が短くなったと書かれています。
[二次情報・決済端末ベンダーの導入事例]
これは1つの導入事例であって、すべての公演にあてはまるものではありません。公演ごとの公式案内を見るのがいちばん外しません。それでも、「物販のために大量の現金を用意する」という前提は、いったん外してかまいません。外したぶんが、そのまま両替し過ぎの防止になります。
コンビニ・カフェ・飲食店・ドラッグストアの支払いは、クレジットカードでもWOWPASSでも通ります。現金を前提に組む必要がある場面は、思っているより少ないということです。
ただしタクシーだけは、使う配車アプリで結論が変わります。外国人向けのK-rideは海外発行のカードをアプリに登録できるので降りるだけで済みますが、Kakao Tは2026年時点で海外発行カードをアプリ内の自動決済として登録できず、降車時に運転手へ直接支払う形(現金・カード・T-money・WOWPASSのいずれか)になります。使うアプリを決めていないなら、タクシーは現金以外で払える前提にしないでください。アプリの選び方は韓国のタクシー配車アプリの選び方にまとめてあります。
現金は3つの穴の合計まで。それを超えるぶんは、現金ではなくWOWPASSの残高に載せてください。
残高は最終チャージ日から6年間保存され、次の遠征でそのまま使えます。次の渡韓を考えている人なら、余って損をするのは現金だけです。
遠征全体でいくらかかるのかを先に把握しておくと、現金の枠も決めやすくなります。宿・航空券・食費まで含めた相場は渡韓費用の相場とシミュレーターで確認できます。
【判断ブロック】あなたは現金をいくら持つか
先に、現金を増やさなくていい人から挙げます。
- WOWPASSの空港セットを事前予約している人——交通の入口が埋まっているので、穴①はゼロです
- iPhoneなどNFC対応端末でアプリの振替が使える人——同じく穴①はゼロです
- 露店や伝統市場に立ち寄る予定がない人——会場・宿・コンビニで完結する遠征なら穴②もほぼゼロで、残るのは復旧ぶんだけです

あなたはどれですか? 当てはまるものを開いてください。
(a) 空港セットを予約済み、またはアプリ振替が使える × 露店に行かない
現金は復旧ぶんだけです。交通の入口はすでに埋まっていて、支払いはカードとWOWPASSで完結します。出発前に両替所を探しに行く必要はありません。市内に着いたあとは、WOWPASSの機械から必要なぶんだけ引き出せます。
(b) 空港セットを予約済み × 露店や伝統市場に行く
穴②と穴③のぶんです。大きさは「1日の買い食いの額 × 市場へ行く日数」で決まりますが、この「1日の額」は本記事ではまだ数字を出せません(実測がないため、推測では書かないという方針です)。ですので、出発前に日数ぶんを見積もろうとしなくて大丈夫です。初日は穴③のぶんだけを持って市場へ行き、そこで払った額を自分の1日ぶんとして、2日目以降は行く日の朝にそのぶんだけ引き出す——この順番なら、額を知らないまま出発しても手順は止まりません。市場は昼にまとめて回ることが多いので、日数ぶんを最初から持つより、行く日の朝に必要なぶんだけ引き出すほうが、財布が薄くなって身軽です。引き出しはWOWPASSの機械(1回10万ウォンまで・手数料1,000ウォン)で行えるので、両替所に戻る必要はありません。初日に穴③のぶんを使ったら、その日のうちに同じだけ引き出して戻しておいてください。穴③は復旧のための手持ちなので、使い切ったまま夜を迎えると、カードが弾かれたときに立て直せなくなります。
(c) 現地の機械でWOWPASSを作るつもり
用意するのは日本円の紙幣です。機械に日本円を入れてチャージする方式なので、ウォンだけ両替して日本円の現金を持っていないと、発行の段階で止まります。発行直後は交通用の残高が入っていないため、そのままでは改札を通れない点にも注意してください。
(d) WOWPASSを使わず、実物のT-moneyだけで行く
3つの穴すべてを現金で埋めることになります。カード代(2,500〜5,000ウォン程度)と最初のチャージぶんを、到着した時点で持っている必要があります。あわせて、ソウルには運賃を現金で払えないバス路線があり、2026年1月時点で183路線が対象と案内されています。「乗ってから現金で払えばいい」は前提にできません。
(e) ソウル市内だけで完結する日程で、現金を持ちたくない
気候同行カードの短期券という道があります。新型券売機で海外発行のカードを使って買えます。かかるのは実物カード代3,000ウォンと、短期券の代金(1日券5,000ウォン/3日券10,000ウォン/7日券20,000ウォン)で、これに利用料が平均3.7%乗ります(2026年8月時点・ソウル市公式の案内)。ただしソウル市内の交通に閉じているため、KINTEXやINSPIREアリーナのように市外へ向かう予定があるなら、これだけでは足りません。行き先を先に確認してから選んでください。
「残高に載せる」を選ぶなら
この記事の結論は「現金を減らして、残りは残高に載せる」でした。その受け皿になるのがWOWPASSです。日本円を含む複数の通貨に対応した機械でチャージでき、店頭の支払いはカードとして使えます。交通用の残高も同じカードの中で持てるため、両替所を探す時間と、小銭を数える時間の両方がなくなります。空港セットを事前に予約しておけば、到着後は受取カウンターに寄るだけで済みます。
もっとも、すでにT-moneyを持っている人や、次の渡韓の予定が当分ない人は、ここで新しく作る必要はありません。この記事で決めたいのは持っていく現金の額であって、カードを増やすことではありません。用意がない場合の受け皿として、公式サイトから予約できます。
\ 空港受取なら、着いてすぐ改札へ /
残高の確認も、紛失時の利用停止も、アプリから行います。そのためには現地で通信がつながっている必要があるので、韓国遠征eSIMの選び方もあわせて確認しておくと、着いた日の手順が短くなります。
まとめ|現金は3つの穴を埋めるぶんだけ。残りは残高に載せる
韓国遠征で現金をいくら持つかは、平均額を調べても決まりません。決まるのは、自分の日程で現金でしか埋まらない穴がいくつ残るかです。
- 交通の入口——空港セットかアプリの振替で埋めておけば、現金ゼロで越えられます
- 露店と伝統市場——カードを断られたときの逃げ道が旅行者にだけないので、その日に食べるぶんは現金で持ちます
- 復旧——市内に着くまでのぶんだけ。着いたあとはWOWPASSの機械が予備タンクになります
そして上限は、この3つの合計まで。それ以上は残高に載せてしまえば、使い残しても損をしません。多く持つべきなのは現金ではなく残高——これだけ覚えて帰ってもらえれば、両替の前で迷う時間はなくなります。
なお本記事の数値は2026年8月時点で確認したものです。両替所の実際のレートと、遠征中に実際に使った現金の額は、現地で確認したうえで追記します。いま推測で書くことはしません。
現金の枠が決まったら、次は遠征全体の予算です。宿・航空券・食費・グッズまで含めた相場と、条件を入れて試算できるシミュレーターを用意しています。

移動・通信・トラブル対応まで含めた遠征全体の判断は、韓国遠征の生存戦略マニュアルにまとめてあります。

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